あんがすざろっく

GONINのあんがすざろっくのレビュー・感想・評価

GONIN(1995年製作の映画)
5.0
皆さんインフルエンザ大丈夫ですか。
随分猛威をふるっていますね。
うちは先々週末奥さんがA型にかかり、先週頭に僕に回ってきました…。家でずっと身動きが取れないというのも辛いもんですね。
そのインフルエンザの予兆だったのか、どうもここしばらくバイオレンスものの映画に傾倒していて(一つ前のレビューは別にして)、血が足りないのか、病んでいるのか…。
今回もそんな感じの作品です。

自分は劇場で観る最新作も、借りてきて見るDVDも比較的少ないので、昔見た作品をふと思い返し、「あっ、今ならレビュー書けるかも‼︎」と一気にあげるレビューもあります。その場合、昔の記憶が多めに脚色されていることがございます。
前置き長くなりました。
自分の頭の中は只今1995年に戻っております…。




キレたら止まらない

映画館の予告ポスターを見て、一瞬で心臓を鷲掴みにされた。
スタッフとキャストの本気度がビシビシ伝わってくるポスターだった。

GONIN

漢字に直すとどうなるんだろう、五人?誤認?
しかしポスターには錚々たる面子が九人。
いずれにしても、日本語で表記してするとちとダサいかな。
結果、五人の男達が集まって暴力団の金を強奪する話なので、五人。
うん、やっぱり漢字にしなかったのは正解ですね。

その九人、正にオールスターキャスト。

クラブのオーナー、万代に佐藤浩市さん。バブル崩壊の煽りを受け、暴力団から借金返済の取り立てを受けています。

その万代に近づく美青年、三屋に本木雅弘さん。
コールボーイを襲って金品を巻き上げていた罪で刑務所に入っていたが、それを密告したのが万代だと思い込み、復讐を試みます。

謎の中年、荻原に竹中直人さん。
リストラされ、就職先を万代に頼ってきます。金属バットを振り回し、やたらめったらなぐりかかってくる様は竹中さんの真骨頂。あっち側かこっち側か分からない、精神ギリギリラインの演技は見事です。

元刑事で、今はぼったくりバーの用心棒に成り果てた氷頭に、根津甚八さん。
カッコいいですねぇ。根津さんは石井監督の演出を絶対的に信頼されていて、晩年病気を圧してでも、GONINサーガに出演していました。

暴力団大越組の組員で、パンチドランカーのジミーを演じたのが、椎名桔平さん。
石井組とも言える椎名さんは、石井監督に見出された方なので、監督の作品に出演すると生き生きしてます。今回はタイ人の恋人を母国に帰そうと、万代に手を貸します。
彼らが社会から爪弾きにされ、現金強奪を画策する五人。

対する暴力団が、万代を追い詰める大越組。
組長の大越に、永島敏行さん。容赦ない取り立てで、万代を苦しめます。
その大越の右腕、久松に鶴見辰吾さん。個人的に僕はこの鶴見さんの演技が大好きです。

現金を奪われた大越は、犯人を探して捕える為、殺し屋を雇います。
それが京谷と一馬の二人組。
片目のヒットマン、京谷にビートたけしさん。
もう何も説明要らないですよね。この人が「鉄砲」って言葉を使うだけで、とんでもない凶器に聞こえます。
その弟分、一馬に木村一八さん。京谷を「アニィ」と慕い、怪しげな雰囲気を漂わせます。


監督が石井隆さん。
劇画作家であり、「天使のはらわた」や「死んでもいい」などの映画監督としても、根強い人気を集めています。
石井映画の三神器とも言われる「夜と雨と血」を、独特の映像美で描きます。
それまで女性の情念をメインに撮ってきた監督が、初めて男性を主人公にした作品が本作であり、これ程までのビッグバジェット作品は、最初で最後かも知れません。

映像にこだわりを見せる監督だけに、今作でも悪夢と現実の境界を、様々な撮影方法や仕掛けで見せてくれます。
氷頭が家族と過ごすファミレスのシーンは、悪夢の始まる仕掛けが素晴らしい。
ジミーが暴力団に捕まり、壮絶な制裁を受けるシーンも強烈です。目の前でまさか…。
考えただけでゾッとします。
三屋がスクリーン手前に向かって歩いてくるシーンのバックでは、京谷が鉄砲でパトカーを蜂の巣にし、どんどんスクリーン奥に消えていく。
なかなか不思議で忘れ難いシーンです。

しかし一番は、荻原の自宅のシーンでしょう。
ここだけホラーです‼︎ホントに悪夢です。
その萩原宅で始まる京谷と一馬のSMプレイ。狂ってますね。

とにかく陰鬱で暴力的な話なので、救いようがないのですが、男達の散り際が決して美しくはないけど、鮮烈です。
あとは、それぞれのキャラクターですね。

公開当時僕は演劇の専門学校に通ってましたが、役のアプローチに行き詰まっていて、その時に本作の鶴見さんの演技に感化されて、現状打開しました。
だから、鶴見さん演じる久松に一番思い入れがあります。

さて、劇場版の後にLD(‼︎)やDVDで発売された特別版は、細かいシーンの追加や音響のリマスタリングが施されていて、ラストシーンが決定的に作品の余韻を変えています。

終わり方は劇場版の方が好きかなぁ。長いし、テンション下がるけど…。
特別版はブツッ‼︎って終わる感じがどうも居心地悪くて。


最後に、これだけ個性的なキャラが揃うと、是非とも海外でもリメイクして欲しい‼︎と思うところ。
公開当時から僕が勝手に思い描いていたGONINハリウッド版のキャスティングを。

万代役はレイフ・ファインズ。
三屋役は、う〜ん、クリスチャン・ベイル?
荻原役は絶対ゲイリー・オールドマンか、トム・サイズモア‼︎(この人もなんか色々問題起こしてますけどもね)
氷頭役は、ちょっと年齢上だけど、ハーヴェイ・カイテル。
ジミー役はイーサン・ホーク。
大越役は、貫禄のクリストファー・ウォーケン。
久松役は、こっちも貫禄のマイケル・マドセン。
京谷役は、貫禄ならこの人忘れちゃいけないデ・ニーロ。
一馬役だけ、どうも思い浮かばないんだけど…。
デ・ニーロと組んで絵になるのは誰かなぁ。

監督はマイケル・マンかマーティン・スコセッシあたりで‼︎


はぁ、こんなの夢のまた夢ですなぁ。
あんがすざろっく

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