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憂鬱な楽園のogierのレビュー・感想・評価

憂鬱な楽園(1996年製作の映画)
3.3
熱風に揺られるパームプランテーション
チャイナドレスの彼女の甲高い叫びは空気を鋭く破りいつしかの恋の美しい記憶を腐らせる。なることのない銃声はそれでもしっかりと重厚感に存在を確かめられて壊れかけのバイクの質量が脳裏に蘇るまるで自分自身の心を映し出されている様で
懐かしさに想いを馳せる間もやがて終わり再び現実という憂鬱な楽園に引きずり返される
檳榔の独特な香りはその興奮を依存させ赤色に染まった口は何かのサインの様に歯を溶かす。まだ見ぬ知らぬ土地への夢は現実逃避だということに気付いていながらもそれを追うことが唯一の希望だった。
アメリカへの憧れ、上海の野望、あるいは自国の憎悪、自己嫌悪。
排気ガスと夜のネオンは終わりなく見たこともない他者の生活を映し出す。そこに我々が侵入することは許されず夜市の臭いに1日の終わりを思い出させる。
車のヘッドライトが夜を切り裂き静まった林の静寂を殺すときあの日の記憶が情景が台湾の夜が孤独を呼び覚ます
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