イチロヲ

荒野のストレンジャーのイチロヲのレビュー・感想・評価

荒野のストレンジャー(1972年製作の映画)
4.5
復讐の炎を潜ませているガンマン(クリント・イーストウッド)が、報復者の襲撃に慄いている脆弱な町に流れ着く。奇妙な流れ者の視点から、超自然的なリベンジ劇を描いている、ハリウッド産の西部劇映画。

マカロニ・ウエスタンでブレイクしたイーストウッドが監督・主演を兼任。自身が築き上げてきた西部劇像とアンチヒーロー像をセルフ・プロデュースしているようであり、何処となく勝新太郎監督の「座頭市」を想起させられる。

放浪するガンマン、報復の連鎖、田舎町の自治、用心棒システムの暗部というクリシェを丁寧に紡ぎながら、己の信念のためには何でもやる男の暗中飛躍を描いていく。謎めいたポーカーフェイスと腰を振らないポリネシアン・セックスが見どころ。

純和風の怪談に比肩するほどのミステリアスな雰囲気に支配されているため、主人公の「静かな怒り」を感じながら鑑賞するスタイルが癖になってくる。「この世は神も仏もいない」を提起してくる、後に引きずる系映画の金字塔。
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