みやび

トレインスポッティングのみやびのレビュー・感想・評価

トレインスポッティング(1996年製作の映画)
4.0
★おしゃれ映画かなあと思ったら、ウンコ映画(文字どうり)だった★

1996年のイギリス映画。スコットランドが舞台。

この映画、私はお洒落な、というかポップカルチャー的なスタイリッシュさをイメージして見始めたが、開始すぐに超汚いトイレに潜って座薬を回収するシーンが出てきて「!?」。終盤は猫のフンも出てくるし、なんだこれ、きたねえ……。とはいえ実際、音楽やロンドンの風景、仲間4人が横一列並んでるショット等々はお洒落でかっこいい。スタイリッシュとお下劣の融合(?)そしてさらにドラッグでの幻覚と現実の揺れ動きがなんとも言えない絶妙な、ポップだけど不思議で不気味で、でも憎めない独特の世界観を作り出していてシュルレアリスム的な味わいがあった。

映画では誇張されているけれど、なんだかそこはかとなく居場所がない感じ、ふつうの幸せ、に疑問を持って息苦しくて前に進めない感じ、それで一瞬でもいろんな辛さを忘れられるドラッグに走る気持ち、そういうのってなんかわかるなと思う。私も今年は就職活動をして将来のことを決めないといけないというプレッシャーと、自分の中ではまだその時ではない現状の間で苦しんでいる。恋人とある意味ではうまく行っているけど、その先に結婚や子供があると思ったら憂鬱だし、そんな小さくまとまった幸せなんて求めていない。自分の国に対する嫌さ、同調圧力への反発心、外野から口を出してくる奴らへの殺意に心が折れそうだ。実際トランス状態を求めて催眠を試したり、精神の安寧のためにタバコをしたりしたこともある。私には私を深く愛してくれていた恋人がいたから、引き戻されたけどもし、彼がいなかったら?私も彼らのように生きていただろう、確実に。レントンが堅気に戻れたのかは些か疑問だ。暫くはそのまま生きていくだろうけど、また、何か些細なきっかけでドラッグ漬けの日々に戻ってるんじゃないかと思う。根本的に何かが解決しないと、社会が変わるなり、自分に自分の心の中のモヤモヤを表現する手段を手に入れるなりしないと、モヤモヤはそのまま残っているんだから。

余談だが、この映画を観ているとなんとなく『スキャナーダークリー』を思い出した。フィリップ・K・ディックのヤク中仲間を描いた文学だ。前に読んだときはなんだこれ、雑談ばかりで面白くないなと思ったけど、今の私にはそれが面白い。
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