アカショウビン

アメリカン・ビューティーのアカショウビンのレビュー・感想・評価

アメリカン・ビューティー(1999年製作の映画)
5.0
初鑑賞は大学1年。はじめて見たときはゲラゲラ笑いながら見た、今回は引きつった笑いがでた。1年のころはすべてが自由だったけど、いまは実家で鬱々とした生活を送ってるせいでこれがちょっと笑いごとじゃない気がした。
主人公のレスターは毎朝の自慰が生活の唯一の喜びというつまらない中年男で、こいつが娘の同級生に一目惚れしたことと隣に引っ越してきた高校生の影響で再び生き甲斐を見つけたとでもいうように活き活きし始める。傍目には、そんな生き方してるといまに死ぬぞという感じなんだけど、当の本人は楽しそうで仕方ない笑。レスターも家族も隣人も少し変といえば変なんだけど実にリアルで、共感を拒むような作りでありながらこれは他人事じゃないぞと強く思わされる。家族というのはなんでこんなに煩わしい存在なんだろう。

いまはパラサイトに代表されるように経済的な格差がわりとトレンドじゃないですか。でもこの映画の登場人物たちの家庭は経済的には中流でそれなりの生活をしてる。パラサイトだと家族内部にはほとんど葛藤も対立もないが、この映画では表面的には整ってるものの一皮むけばみんな疎遠で孤独。(パラサイトっておもしろいけどあれほど経済的な困難を抱えた家族があれだけ良好で協力的な関係を築いてることに僕はいまいちリアリティを感じられないんですよね。)大げさに聞こえるかもしれんけど、人間どう生きるべきかというヴィジョンがないと豊かになっても結局楽しくないんだな。ファイトクラブの問題とも共通するね。豊かさはあくまで基盤であって目的じゃないんだ。

俺はサンセット大通りとかアニーホールみたいにあらかじめ結末を示唆しておいて、こうなった顛末をお話しましょうって構成の映画が好きかもしれん。