くりふ

ザ・コミットメンツのくりふのレビュー・感想・評価

ザ・コミットメンツ(1991年製作の映画)
4.0
【FOOL & SOUL】

これは少し前の『ソウルガールズ』に登場した、ソウル狂のアイリッシュが印象に残ったので思い出し、久しぶりに再見しました。

アラン・パーカー良作のひとつですね。ダブリン貧困層の若者たちがバンドを組み成功を目指すが…という太く短い顛末記。思い出したのは大事な共通点があるからです。

想像ですが、虐げられた歴史を持つアイリッシュが黒人音楽にシンパシーを持つことはわかる気がします。

「アイリッシュは欧州の黒人、中でもダブリナーは黒人の中の黒人」と、主人公ジミーは新バンドでソウルをやることを決め、メンバーのソウルを覚醒させますが、この構図が、アイリッシュがアボリジニのソウルを覚醒させる『ソウルガールズ』と同じなんですよね。ここ面白いし共感してしまう。比べるとより両者を楽しめると思います。

本作の魅力は、素人の中から根気強くオーディションしたという登場人物の、鮮魚のような活きのよさ、彼らが奏でる、腹に響くソウル・ミュージックその躍動感、そしてオールロケによる、鮮明な空気溢れるビビッドな撮影、という三拍子揃ったところですね。

みるみるよくなるステージには惹き込まれます。毎回のライブが如実に変わり(演出が巧いんですが)、終盤の「Try a Little Tenderness」なんて涙もの。「Mustang Sally」を物語始めと終盤で歌い差異を見せたりもしていますね。公開当時はサントラがvol.2まで発売されましたが、両方買って聴き込んでましたよ(笑)。

野暮ったかったコーラス三人娘の艶々倍増度もうっふんとステキ。私はヴァージニア・マドセン似のイメルダ推し!

映像では気の抜けたカット皆無なのが見事ですが、雨に濡れた路面、水溜りに映り込むネオンの原色に何故かぎゅん、と心掴まれもしました。生活が溶け込みつつも尋常じゃない美しさだと感じて。

もひとつ大きいのは、アホの魅力ですね(笑)。

出てくるのがみな直情型、長い目で見る、なんてことはやらない。実際付き合うと大変だな…という連中ばかりですが見ている分には楽しくて。

お笑いを演出せずとも、彼らの言動が自然とお笑いになるところがリアル(笑)。ジーナ・ロロブリジーダとキム・ベイシンガーの乳○の話が大好き。

で、屁理屈こね回すインテリ皆無だから話が早くていいや。が、そんな彼らの資質が物語を「太く短く」終わらせてしまうんですね…。

魂揺さぶる歌でこれだけ盛り上がったのに、プツンと終わってしまうあっけなさ。ここ、ちょっと評価がわかれる部分じゃないかとは思います。

…はて、「コミットメンツ」は何のための打ち上げ花火だったのか?そんなことを後で反芻すると、また面白くもなるのですが。

ジミーがメンバーにソウルを学ばせるため、ジェームス・ブラウンの「マントショー」を見せるところが楽しく…胡散臭かった(笑)。

ちょうど少し前に、(当時の)別スレで話題にした映像が使われていたので、個人的にチョー可笑しかったです。

https://www.youtube.com/watch?v=vruy2GRUsV8

<2014.5.23記>
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