ブタブタ

スーパー!のブタブタのネタバレレビュー・内容・結末

スーパー!(2010年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

「ヒーローとサイドキック」と言う存在と2人の関係、その物語に個人的にも思い入れがありまして、スーパーマンの様に常に1人で起立しているある種完全なヒーローよりもバットマンとロビン、最近では『シビル・ウォー』のキャプテン・アメリカとウィンターソルジャー、かけがえの無いパートナーであり助け合い足りない部分を補い合う、悪と戦うと言う特別な目的の為にコンビを組む戦友であり、サイドキックの存在はそのヒーローが完璧な存在では無く実は弱く寂しい面もある、それを象徴している存在であり、パートナーを必要としている孤独なヒーローの唯一の真の意味で理解者であり友が「サイドキック」なのではないのかなと思ってます。

『キックアス』と比較される事が多い作品ですが劇中でもオマージュ的なシーンがある様にテーマとしては『タクシードライバー』に近い、一見お馬鹿でしかしよりダークで救われないバージョンの『タクシードライバー』でもあったなと。

『タクシードライバー』でトラヴィスが一回目の暗殺に向かう時、モヒカン・グラサン・アーミージャケットと言う余りにも気合いが入った格好で行ってしまった為に「なんだアイツは?」とSPの人達がみんな集まって来てしまい追われまくって失敗する、と言う爆笑したシーンがあるのですがフランク=クリムゾンボルトの行動は全てがあんな感じ。

小説『トリガー』にも感じるのですが悪人なんてそうそういる訳ないし、実際にヒーロー活動を始めてしまったらその標的になるのは余り大したことない悪人(?)達で『トリガー』ではシルバーシートに座っただけの人間を殺したりしてましたが、クリムゾンボルトも列の割り込みをした男の頭をレンチでかちわる、ついでにツレの女も殴る、フランクのボンクラさとやってる行為のギャップ、見てるこっちのドン引き具合や残酷描写は『キックアス』の爽快さに比べて本作はあくまで現実の話しを描いていてきっとこの先には酷い事しか待ってない、報いが待ってる予感がありありとして愉快なボンクラを描きつつまるでドキュメンタリーを見ているような不安に襲われる感じがしました。

そしてクリムゾンボルトのサイドキックであるボルティー=リビーは可愛くてエロくてヒーローオタクと言う一種のボンクラにとって理想の女の子とも言えるキャラクターですが、ラノベによくある空から突然降ってきて何でもしてくれる主人公にとって非常に都合の良い女の子のキャラクターと同一の存在にも一見見えて、でもあんな子が本当に存在するとしたら狂人しかいない訳でリビーは狂人、『ウォッチメン』で言ったらロールシャッハと言いますか己の正義感、思い込みが行き過ぎて完全に常軌を逸している。
その狂気が寧ろ愛おしく感じる程で、言うなればリビー(ボルティー)は「可愛い女の子版のロールシャッハ」に思えました。

ある意味ボルティーは己の正義に従って行動しクリムゾンボルトの付き合いで死んだのですし『ウォッチメン』のロールシャッハもナイトオウル二世のサイドキックであり己の正義を貫きナイトオウル二世の傍らで死んだ、その死に様もボルティーはロールシャッハに重なりました。

リビーの悲惨な最後も当然の報い、帰結と言いますか、頭が半分吹っ飛んだリビーの顔を見た時はショックと言うよりも妙な納得感、哀れで悲しいと同時に堪らなく可愛くて仕方ない、ヒーローと共に戦い死んでいったロビンやロールシャッハと同じくイディーもまたサイドキックだったのだと思いました。

リビーだけでなくフランクの事も。
本作でもフランクが描いたヒーローのマンガがオープニングアニメとして使われていますが
『found.』と言う未公開ホラー映画がありまして、80年代が舞台の残酷スラッシャーホラーなのですが、『Found.』も主人公の少年が描くマンガがオープニングアニメになっていて、袋を被った怪力男と蜚蠊改造人間(?)と言うヒーローとサイドキックが街のクズ共を容赦なくぶち殺していく内容で、ヒーローを想像したり漫画を描いたりするのはボンクラ万年男子小学生の基本ですしフランクの事も、ああ間違いなくコイツは仲間(笑)と思えて感情移入しまくりでした。

PS.
今はなき渋谷の「シアターN」で本作を見ました。
ブタブタ

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