イチロヲ

肉の蝋人形のイチロヲのレビュー・感想・評価

肉の蝋人形(1933年製作の映画)
4.5
投資家の裏切り行為によりアトリエを焼失させられた彫刻家が、12年の歳月を隔てて蝋人形館を設立するのだが、ある一人の女性記者が内部の悪巧みに肉薄してくる。チャールズ・ベルデンの戯曲を映像化している、闇落ち系サスペンス・ホラー。

犯人が最初から明示されているパターンの純然たるサスペンス路線。肝っ玉の据わった女性記者の単独行動がアグレッシブに描写されており、少しずつ真相へと近づいていく過程に訴求力が詰まっている。江戸川乱歩っぽいところも醍醐味。

女性記者のルームメイト(フェイ・レイ)がヒロインなのだが、グレンダ・ファレル演じる記者のほうにインパクトが集中している。したたかに立ち回っていく姿とモダンガールなファッションが魅力満点であり、唯一の弱点にビビる仕草もキュート。

自身の野望のために一意専心となっている彫刻家の立ち居振る舞いもまた素晴らしく、ゴシック風の美術セットとの調和が、絶大な効果を上げている。蝋人形が微量ながら震えているのはご愛嬌。
イチロヲ

イチロヲ