『恐怖の報酬』『悪魔のような女』などで知られるアンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督のサスペンス・ミステリー。
フランスのとある小さな村。〈カラス〉と名乗る謎の人物から、村人たちの秘密を告発する手紙が次々と届き始める。
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流石のクオリティー。村の人々を誰も信じられなくなっていく疑心暗鬼サスペンスとしても、怪文書の送り主〈カラス〉の正体を暴いていくWho Done It型の犯罪ミステリーとしても見応えがあった。
かなりの集中力を必要とする作品。序盤は、人物把握と字幕を追うことに必死だったし、終盤は、誰が真犯人なのかとかなり振り回された。"信用できない語り手"ではないけれど、当初〈カラス〉の一番の標的となって被害者面していた主人公ですら、次第に信用できなくなっていった。
とある人物の巨大な影と、地面に落ちた手紙視点から葬式パレードに参列する人々を撮った映像が印象深い。
興味深いことに、本作の影響により、カラスを意味する仏単語"Corbeau"に、"匿名の手紙を送る人"という意味が加わったらしい。
ドイツ占領下フランスで製作されたフランス映画史上屈指の問題作。ドイツ側からはゲシュタポ批判が含まれているとして公開禁止を命じられ、フランス側からはドイツに協力したとしてクルーゾー監督をはじめとする製作関係者数人が停職処分を喰らった。
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