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人生タクシーのBOBのレビュー・感想・評価

人生タクシー(2015年製作の映画)
3.7
母国イランから映画製作を禁止されているジャファル・パナヒ監督が、自らタクシー運転手に扮してゲリラ撮影を敢行したベルリン金熊賞受賞作。

🎥「このバラを全ての映画人へ。映画に関わる人たちは信頼できるから。」🌹

モキュメンタリー形式の社会派ドラマであり、パナヒ監督の反骨精神が滲み出た映画讃歌映画。タクシーのダッシュボードに設置されたカメラが、テヘラン市街地の街並みと共に、個性豊かな乗客たちが繰り広げる人生の悲喜こもごもと、イラン社会の様々な側面を映し出していく。

劇中で明かされる、上映可能なイラン映画の条件が興味深かった。"俗悪なリアリズム"と称し、自分達にとって都合の悪い事実を隠蔽しようとするイラン政府。姪が漏らした「現実を撮りなさいと言っといて、本当の現実や暗くてイヤな現実は見せちゃダメって。私には違いが全然分からない。本当とか本当じゃないとかって何?さっぱりだわ。」という、イラン映画業界の矛盾を指摘する言葉が心に残った。

車のひったくり犯がカメラを破壊してエンドロール。こんな映画の終わり方は初めて見た。人生賛歌的な余韻に浸っていたのに、一変して後味が悪い。これがイランの現実だという皮肉、又はジャファル・パナヒ監督のイラン映画業界に対する反抗なのだろうか。哀しいかな、本作は"俗悪なリアリズム"に該当するので、上映禁止は避けられない。

ワンシチュエーションのリアルタイム映画としてもよく出来ている。

中国に次いで死刑執行が多い国イラン。

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