ドント

戦争のない20日間のドントのレビュー・感想・評価

戦争のない20日間(1976年製作の映画)
3.8
76年。とてもよかった。ナチスとの戦争真只中。20日間の休暇をとった従軍記者が住まいへ戻り、様々なことをしながらその周辺で過ごし、また戦地へ帰るまでの日々を描く。
この監督らしい思いきりバシッと切る編集や出し抜けに回想が差し挟まれるなど大胆な演出もあるが、休暇なのに心が休まらない男や他の人間たちの人生と姿が丁寧に、風のように描かれている。
銃後もいわば戦争中であるが、戦場の影響・戦場との差異・戦場との温度差・それとは無関係のつらさに主人公は常に居心地の悪さを感じる。撮影所での「映画とはいえ女が戦車に乗るのはありえんよ」「いやこれ映画ですから」とのやりとりは笑ってしまうが、工場で演説をぶつシーンのモヤモヤ感はたまらない。
そんな中で出会った女性との交情。夢のように闇に浮かび上がる笑顔と肢体、ガラス越しに撮られる声の聞こえない会話。溜め息が出るほど美しいが、これは戦場と戦場に挟まれた一時の平和なのだとぐりぐり焼き印を捺されるようなブックエンドの構成がすごい。
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