もちもち

南極料理人のもちもちのレビュー・感想・評価

南極料理人(2009年製作の映画)
5.0
南極観測隊員の料理人として海上保安庁より派遣された西村。昭和基地からも1000キロ以上離れた極寒の地、そして1年以上日本には帰れないという状況の中で、個性溢れる隊員達とのユニークな共同生活が描かれる。エッセイが原作ののんびりとしたコメディ映画。まさしくスローシネマという感じで、派手な展開はなく、帰国までの日常がゆったりと映し出される。大笑いすることも涙することもないけど、絶妙にクスッと笑えるシーンばかりでたまにじんわり心温まる。ほぼずっと基地の中で場面展開がないにも関わらず、いつまでも見てられる中毒性がある。全部変にやりすぎてなくてリアルなのがいいし、隊員達の個性的なキャラクターに魅了され、独特の会話劇に見入ってしまう。俳優達の味のある演技が素晴らしく、間の取り方が絶妙。特に生瀬さんとか凄かった。南極基地という隔離された僻地で暮らすおじさん達が高校生のようにふざけ合っている姿は微笑ましくどこか羨ましくもなる。医務室をバーにしてたり、シロップでライン引いて野球したり、裸で外で写真撮ったり、豆まきしたり。娯楽のない極地だからこそ、こういったふざけ合っているシーンがより温かく、楽しそうに見える。そんなコメディタッチのベースの中にバランス良く切ないシーンや心温まるシーン、極限状態ならではのちょっと怖いシーンなんかも散りばめられているのが深みを出してくれる。メインのテーマである料理のシーンはどれも凄く美味しそうで見ていてお腹が空いてくる。やっぱりご飯を美味しそうに見せる映画は好きだなと改めて感じた。料理を食べるシーンではあまり会話が多くなく、皆マナーなど気にせず貪り食っている。その汚い食べ方が南極という地で料理がいかに大事なものなのか感じさせてくれる。それに凄くご飯が美味しそうに見える。スローシネマってものによっては全くハマらなかったりもするけど、この映画はのんびり何度でも見返したいなと思うほど大好きだった。
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