たと

飼育のたとのネタバレレビュー・内容・結末

飼育(1961年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

まず、単純に声が聞き取りにくい。雨のシーンは絶望的で諦めた。当時の録音機材の問題?

太平洋戦争末期、山間部にある村を舞台にした原作大江健三郎『飼育』は子どもと捕虜になった黒人兵の交歓(?)が主題と言えるだろうが、映画ではそれは脱臼させられる。代わりに前景に取って替わるのは本家と分家と疎開者のいざこさ。濃い血縁関係集まる閉塞的な"ムラ"社会で起こる窃盗、出兵前夜の逃走といった出来事は全て黒人兵がスケープゴートにされる。原作は<僕>による一人称で語られ、最後には<僕>を人質に立てこもった黒人兵へ父親が<僕>ごと鉈を振り下ろすが、映画では"ムラ"社会に焦点が当てられるため黒人兵の葬式後も撮られる。8月15日、終戦が知らされると黒人兵殺害の責任を取らされるのではないかと"ムラ"の合議で「何もなかった」、「何も見なかった」とされる。映画ではさらにもう一展開、徴兵忌避した本家の兄が帰ってくるが一悶着あり事故死。それすら合議で「こいつが黒人兵を殺した」事にする責任転嫁の醜さ。
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