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飼育のhzkのレビュー・感想・評価

飼育(1961年製作の映画)
4.3
大江健三郎の短編小説の映画化。
原作では子供目線で書かれてて、初めて見る黒人に対する畏れと好奇心、その生命力に圧倒されるような描写があって特異な状況下で成長する話だったけど、映画版は村の大人の汚さが前面に出ててなんという胸糞感!!
墜落した飛行機の生存者の黒人兵を捕虜として村で「飼育」する始まり。
足には動物用の罠がかかったまま閉じ込め、黒んぼと呼び飼育を押し付け合う。
まーー最初から最後までずっと言い訳だらけで責任転嫁で人のせいにし合う醜い村人を見せつけられる。
誰のせいでこうなった?
お前のせいだ、いやアイツのせいだ。
じゃあアイツのせいにしてしまおう。
正義感振りかざそうものなら一斉に石を投げつけられる勢いなので、右ならえにならざるを得ない閉鎖的な団体意識。
人と同じで安心して、列からはみ出すことはしないし許されない。
結局無関係の「黒んぼ」に全てを押し付け、丸く収まった、水に流そう、と酒飲んで大騒ぎして次の日にはまた同じことを繰り返してる。
全員が人を馬鹿にして見下して、お互いのことなんかこれっぽちも信用してなくて、共通の敵を作った時だけ結束し合ってる感じ。
これって現代でもすごく身に覚えのあるイヤ〜な人間の習性なんだよね。
生活や環境が変わっても、何十年も前からこういう醜い部分は根っこにある気がする。
これが日本人特有の性質だったらやだな…そんな気もするな…アハハ…
「誰がこんなザマにしやがったんだ」
泣き喚くババアのこのセリフにこの映画の嫌な部分が凝縮されてた。
そして少人数だからこそ起こる差別意識。
黒人兵へはもちろん、東京から疎開してきた人へも。よそ者を排除しようとする村の嫌なとこだな…
東京が燃えてる、ってシーンでの子供たちのザマアミロ発言はゾッとする。
純粋なうちにあんな大人達を見せられると行き着く先はアレと同じ人間になるのか…という救いのない将来。
生まれた場所から出ない限りはレールに乗ったも同然だ。

モノクロで暗くて見えにくいのと、訛りでセリフ聞き取りづらいのが難点。
男たちは哀川翔かな?ってくらい声高くて早口だから何言ってるかわからんかった。
字幕付けて全セリフ把握できたら更に評価上がるかも。
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