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アバウト・シュミットのhajime363のレビュー・感想・評価

アバウト・シュミット(2002年製作の映画)
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保険数理士のウォーレン・シュミット(ジャックニコルソン)は自身のオフィスで時計をじっと見つめている。時計の針が5時を指したところで、場面はウォーレンの定年退職記念パーティへと移る。会社の同僚や友人がお祝いの言葉を述べるがウォーレンは無言。
このシーンで印象的だったのは、パーティ会場に飾ってある写真に映る“牛の目”と、ジャックニコルソンの目が連続して映し出されるカットで、当初は何かのメタファーかなと思ったのですが、観終わってみての感想は、ジャックニコルソンの目による演技を強調したかったのかな、という感じです。
というのも、本作におけるジャックニコルソンは口数が少ないキャラクターで、会話に詰まり無言で見つめるシーンも多く、感情の発露は手紙を書くことによるモノローグが中心。
そして、その目の演技がとてつもなく素晴らしいのです。ありがとうジャックニコルソン。個人的ベストは泣きながら立ちションをするところですが、ジャックニコルソンはすべてのシーンで最高です。

お話としては、定年退職後の孤独を描きつつ人生の意味を問う内容。
物語前半のウォーレンは“歴史に名を残す存在への憧れ”を念頭に“今まで築き上げたもの”に対し懐疑的になります。
「手に入れたもの 掴んだものが 急に小さくなる 今までの毎日が無駄に思えてしまう」
フラワーカンパニーズです。

物語中盤では、その“今まで築き上げてきたもの”を少しずつ失っていきます(失う要因は不可抗力のものもあれば上記の懐疑心に起因したり、そもそも築き上げたと自分は思っていたけれど、内情はそんなことなかったり←これが一番しんどい)

そして、終盤。喪失、諦めを経て新たな境地に達するというか…民族博物館的な場所で開拓民の展示を見て感化されます。これは歴史に名を遺す存在との対比構造的で、開拓民1人1人の名前は残っていないけれど、後世に影響を及ぼすという意味では共通している。

人生の意味としての“歴史に名を残すこと”の本質は人々に影響(心理・行動の変容)を及ぼすことであり、それは規模(影響を受ける人の人数)という尺度においては人ぞれぞれ違いが生じるが、生じる結果は規模と関係なく同じである。そして、家族だからといった血縁やパーソナリティーもノイズでしかなく、善意(募金)によって生じた影響(手紙)こそが重要なのではないか…(募金とか手紙とか、急に登場しましたがネタバレポイントなので詳細は割愛)
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