はやと

時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース!のはやとのネタバレレビュー・内容・結末

4.1

このレビューはネタバレを含みます

再鑑賞


前作『ベルリン・天使の詩』はオールタイムベストに入るほど大好きな作品。


今作は前作登場した天使・カシエルが主人公。
少女が事故で落下しそうになるのを助けるために人間になり、堕天使エーミットに唆されて賭博で現金を溶かしたり、マフィア(?)の悪事に手を染めそうになったりと、前作のダミエルとは正反対と言ってもいいほどの人間生活を送ることに。


前作ではダミエルが人間に恋をし、自身も人間になるまでの物語だったが、今作ではカシエルが人間になり、正しい行いをしようと奮闘し、失敗するのがテーマとなっていた。
常に人のそばで人間を観察していたカシエルだったが、実際に人間になると目に見えるもの、耳に聞こえるものだけを信じるしかないと思い知り、周囲に影響されながら生きていくことを思い知る様があまりにも生々しく、前作とは真逆と言ってもいいストーリーだった。

最後、人間としてのカシエルは死という形で幕を閉じてしまうが、また天使としてラファエラと人間のそばで見守ってて欲しい。
悲観的ではなく、希望に満ちたエンディングなのではないだろうか。


ベルリンの壁崩壊後のドイツの東西問題や、戦時中のナチスなど、社会問題的要素も散りばめられており、相変わらず詩的な表現も多い一作になっていた。
だけど、中盤〜終盤にかけての武器を奪って少女を助けて〜のくだりが全く別ジャンルの映画のようだった。
映画的にはストーリーにメリハリが出てアメリカのスパイ映画みたいになってたけど、それだと『ハメット』みたいに別映画としてやって欲しかったな。

終盤の武器を奪う→船を乗っ取られる→少女を助ける→撃たれてカシエル死亡→一行が船に乗ってどこかへ行くのくだりが少し分かりにくいのも残念。


堕天使を演じるウィレム・デフォー、ラファエラを演じるナスターシャ・キンスキーが素晴らしい。特にラファエラは天使に相応しい美しさというか神々しさがあって、やはりヴェンダース映画とナスターシャ・キンスキーの相性は抜群だと思った。
はやと

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