Sasada

トウキョウソナタのSasadaのレビュー・感想・評価

トウキョウソナタ(2008年製作の映画)
4.0
ハローワークの行列、会社への道を急ぐ黒い群れ、檻の中で微動だにしないいくつもの眼、作業服へ着替える手際の良さとその場所。
代替可能で不可視化された存在としての「人間」が不穏さをこれでもかと強調する中、そこから離脱し飯食って音を奏でる話。めっちゃ面白いじゃんなぜ今まで見てなかった自分よ。
途中で挟まる明らかに異質なコメディパートの転調が素晴らしく、「いまウィンカー出してなかったな」のツッコミが気持ち良すぎる間とボリュームで最高だった。あのシーンをきっかけに彼らの話が再生へと向かうような気がする。

建前と本音とか、嘘と本当とか、欺瞞と犠牲とか、あらゆるものはそのバランス(もしくはグラデーション)なのだと思うけど、どちらかに比重が偏ると苦しいよねと。前者に振り過ぎてしまったが故の揺り戻しとしてのそれが、再生を導くイントロとなる。
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