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座頭市の教授のレビュー・感想・評価

座頭市(2003年製作の映画)
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北野武監督作品11作目。

「菊次郎の夏」「BROTHER」「Dolls/ドールズ」と彼なりの、エンターテイメントとアートのバランスを模索していた結果、物語を機能させるような「映画的」カタルシスが恐ろしいまでに失速していた3作を経て、そういった小賢しい試みを一切排除して、とはいえ初挑戦の時代劇に舵を切ったことで、清々しいまでに面白い映画になっている。

作品のテイストとしては、黒澤明の「用心棒」や「椿三十郎」のようなタッチと、まさにリメイク元である勝新太郎の「座頭市」のエッセンスを忠実に織り込みながら、北野武独特のクールさ、ドライさと、今回が初タッグになる鈴木慶一の音楽との相性が見事。

勝新太郎的なユーモラスさを排除して、しっかりと北野武的な「座頭市」の世界観を構築している。
元々、勝新の影響は強いぶん、思い入れも強かったのだろうと思う。

本作がストレスレスに鑑賞できるのは、とにかくダイナミックな殺陣に尽きる。
それも過去歴代の時代劇の踏襲と、ブラッシュアップの賜物。
伝統的な時代劇映画のルックと、スタイリッシュで血生臭い描写が痛快。

柄本明、岸部一徳、石倉三郎の悪役が多様な上で、ガダルカナル・タカのコメディリリーフっぷりの面白さが秀逸。

エンターテイメントに振り切った点、という点が先に述べた「小賢しさ」を払拭し、素直に「面白い」という映画に仕上げつつ「北野武らしさ」という独自の世界観や味わいを表現しているというだけで充分価値のある作品である一方、かつてのような映画を観ている時間の豊かさ、はエンタメ性にかき消えてしまっていて、上手な映画であることに変わりはないが、作品としての持続したボルテージを保っているとは言い難く、ラスボスまでの件は、駆け足になり過ぎて失速している、というのも同時に感じてしまう。
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