Punisher田中

レネットとミラベル/四つの冒険のPunisher田中のレビュー・感想・評価

3.9
ある夏、田舎道で偶然に出会った真反対の少女二人。
レネットとミラベルは、共に空き家の農家でバカンスの日々を過ごすことになるのだった。
2人が体験していく出来事を4編に渡って描き出す短編オムニバス作品。

音と色彩が織りなす美しいマリアージュに秘められた人間の悪性。
田舎町で絵を描き続けてきたレネット、都市・パリで生きてきた都会っ娘・ミラベルの真逆な2人の少女が自然と社会を冒険する話を描いている今作。
エリック・ロメール作品と耳に入れ、アート作品と身構えて鑑賞に臨んだが、ストーリーもシンプルに楽しめる作品だった。
今作は全4篇に渡って制作されており、どの冒険でも、差別をする人間や足元を見る人間、はたまた悪になろうとも生にしがみつく人間といった醜い人間達が壁となって立ちはだかるものとなっている。
この攻撃的なイヤ〜な人達は現実世界の日常で出くわしたらそれはまぁ嫌なんだけど、今作の様に冒険を邪魔する敵と思えばドラクエに出てくるドラキーやスライム程度で、全くもって大した存在では無いように思えてしまう。
ここが今作の良い所で、社会生活に疲れ切った受け手の日常を冒険に変えてくれる新しい価値観をもたらす作品だった様に思うし、これこそが僕達社会人に与えられるべき冒険の物語なのではないかと。
そして、それらを痛快に斬り伏せていったかと思えば、どんな人間にも自分なりの道徳を貫こうとする2人の図太さと健気さ、そして純真さが今作をより魅力的に魅せている。

ストーリーについて色々と語ってしまっていたが、余白を意識した構図や色彩構成は本当に凄く良く出来ていて、エリック・ロメールの拘りをどの画からもひしひしと感じることが出来た。
また、特に気になったのは衣装デザインとスタイリングで、端役ですらも脳裏に浮かぶほどの強烈な個性を感じる存在感をどのキャラクターも持っていたのは服装や髪型がしっかりコンセプトを持って設定されていたからで、そこを絶対に外さずにキャラクターの特色を発現させるスタイリングの力なんじゃ無いかなと感じられた。
時間も98分と決して長いものではなく、見やすさとテンポの良さで娯楽的に楽しめるのが今作のより良いところ。
絶賛、アマプラで公開中の作品なのでエリック・ロメール作品の入り口として今作を堪能してみては。