こなつ

レネットとミラベル/四つの冒険のこなつのレビュー・感想・評価

3.8
エリック・ロメール監督の作品を初めて鑑賞。今年は今まで鑑賞してこなかった監督やジャンルに挑戦してみたい。監督は、老年なのに矍鑠とした、威厳のある風貌が魅力的だ。2010年に亡くなったが、そんな監督がウィットに富んだ会話で綴り、鮮やかな色彩で描く作品をずっと観たいと思っていた。

対照的な2人の少女レネットとミラベルが、田舎と都会で経験する出来事を4つのオムニバスで映像化。自然の光が美しく、何も特別なことがあるわけではない軽やかな人間ドラマだが、良く喋る少女達がキラキラしていて眩しい。流れるようなフランス語が新鮮で不思議な感じのする物語だった。

自転車のパンクをきっかけにフランスの田舎町で知り合った2人が、夜明け前に訪れる無音の瞬間を体験する。青く染まった空の下、一瞬だけ本当に一瞬だけ何の音も聴こえない不思議な時間がある。凄く興味深くて思わず息を呑みながら、その瞬間を味わう。ブルーアワーという日の出前の空が濃い青色に染まるというのは知っていたが、無音の瞬間とはどんなものか、、ちょっと興奮した。

パリで同居生活を始めた2人。相変わらず他愛もないことを喋りながら友情を育む。街のカフェでかなり奇妙な信じ難いカフェの店員に出くわしたり、街の至るところで見掛ける物乞いや、スーパーで出会った窃盗常習犯から犯罪や良心についての対話を繰り広げたり、家賃を稼ぐためレネットが描いた絵を売ろうと奔走したり、若い2人が繰り広げる冒険の日々と軽快な会話劇が何とも面白い。とにかく良く喋る。そんな大人になる前の少女達の真っ直ぐな姿が生き生きとしていてとても眩しかった。
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