1999年。夫婦が刃物で惨殺される事件が発生。犯人は演劇人、芝居中に嘔吐し逮捕される。弁護人側からの心理鑑定に心理学教授が任命されるが、その助手小川カフカは容疑者の多重人格を疑い、自ら検察側の心理鑑定に携わっていく。冒頭から登場人物のドアップ、また異様にフォーカスがあたった背景、神経を逆なでする小刻みな編集。容疑者の心の中の悪いやつがどうも幼児虐待された恨みで主人を乗っ取って犯行に及ばせたようだ、という序盤。小道具の短いショットが効果的。検察/弁護士/心理学教授/刑事と名優たちが、叫ばない怪演。容疑者と鑑定人のバトルが、カフカ自信が言ってるように、裁判証拠の客観性を逸脱し、主観で容疑者を裸にしてやろうという意図(カフカの個人的背景も描かれる)。それが、シナリオに則り演じる俳優、演技とはなにか、虚構でのキャラクターを内包しながら生きる役者論にもつながってきて、なるほど名優で周りをがっちり固める必然性。清張モノも少し思わせる日本各地。くすんだ基本トーンに、ガレージ・鉄橋・看板など原色がポイント。水平線が斜めになっているカットは、あとで振り返ると全てその必然がある。列車や線路など、森田監督の鉄ちゃんぶりも良く出ている。順番が逆だが、石川慶っぽい、っていうのが第一印象。