ちろる

39 刑法第三十九条のちろるのレビュー・感想・評価

39 刑法第三十九条(1999年製作の映画)
3.9
すごい話だった。
鈴木京香さん演じる精神鑑定医の香深と、堤真一さん演じる柴田の怪演のぶつかり合いが凄くて、弁護士役の樹木希林さんの演技すら食うような、2人だけの見えないドーム空間に包まれたような演技には圧倒された。
(たしかこの2人付き合ってた?)
精神病か詐病かは、ちょうど松本智津夫被告の件でこの精神鑑定についての論議が最近あって、その時ちょっと色々思う事があったのだけど、
心神喪失者=責任能力がない=刑罰を加えない。
という事ははたして人権を守る事に繋がるのか?
もっといえばその犯人を罰しないという事は、その犯人を人間とみなさないという事に繋がるのではないか?
エンタメで引き込みながらも嫌という程に、刑法第39条という存在のあり方について真正面から問いかけてくる意欲作。

不幸な事件の被害者でも加害者が少年だったら、精神疾患だったら償う必要はない。
弁護士が言う加害者も被害者なのですなんて言葉が被害者の家族が飲み込めるはずないのに被害者の憎しみの心は宙ぶらりんになる。
法という大きな盾に、守られて罰することもできないという苦しみは必ず誰かに闇を生む。
そして闇は連鎖して塞がらないほどに大きくなることもあるというのに・・・。

「精神鑑定とは、結局は鑑定人の主観に過ぎない」という言葉がこの映画でいちばん頭に焼きついて忘れない。
刑法第39条という繊細な議論を要するテーマですが、作り手側にも逃げがなくまっすぐと目的に向かっていく姿勢には共感できた作品だった。
さすが「黒い家」の監督×脚本コンビだけあります。
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