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裸の大将のkossのレビュー・感想・評価

裸の大将(1958年製作の映画)
3.8
戦争へ邁進する社会を聖なる人が皮肉る。水木洋子の鋭い脚本と小林桂樹の名演。山下清の家庭も徴兵検査も描かれ、放浪ではなく社会の偏向と異常に唯一気づき逃げる男と捉える。社会批判と思想性の高い寓話の趣を見せる。その上、母親は母物女優の三益愛子、大佐の東野英治郎、食堂主人の加東大介から、一場面だけに三木のり平、柳家金語楼、クレージーキャッツまで登場する東宝の力の入れようなのに、監督が堀川弘通だったのが残念。もっとも残念だったのが偽の玉音放送。だが、玉音放送を清が裸で聞くシーンは多くの玉音放送シーンの中で群を抜くシニカルさ。オープニングの警官からの列車トンネルの逃走、エンディングの新聞記者と人々からの浜辺の逃走。山下清の逃げる男像だけが思想性を骨抜きにして後のテレビシリーズに継承されたのか。
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