明石です

地球の静止する日の明石ですのレビュー・感想・評価

地球の静止する日(1951年製作の映画)
4.8
人類の科学の暴走に歯止めをかけるべく宇宙人が到来、地球人になりすまして暗躍する話。1951年公開のSF映画。地球人と変わらぬ見た目、平均寿命が130歳、銃で撃たれた傷跡も薬を塗ったら全快などなど、このジャンルの元祖らしい豊富なアイデアが楽しい。

宇宙人のやって来た目的が、原子力を用いた科学の暴走により、他の惑星に悪影響が出るのを止めるためというテーマがとても深い。「地球が静止する」のは宇宙人が到来したからではなく(タイトルとジャケットではそう感じられるのが味噌)、人類が宇宙人の警告を無視した結果そうなるのだという意外性がまず好き。

そして宇宙人(=主人公)が人類最高の知能を持つお偉い教授が長い間解けなかった方程式をいとも簡単に解いてみせたことで、その正体が判明してしまう展開に子供心?をくすぐられる。やっぱり数学的才能のある人はセクシーなのだ。あとやって来た宇宙人が下宿先を見つける場面で、あら、宿泊者さんでしたか、とものの3秒でホーミーな雰囲気になる(勝手に家に入って来てるのに!)の、現実味が今ほど重視されていなかった昔の映画という感じがして逆に好感持てた。

また地球の文明(の一部)がスペシウム光線みたいなので破壊されるシーンのSFXがけっこう凄くて、これを70年前に映画館で目にしていたらぶったまげたんだろうなと思う。しかしこの50年代のSFやこの時代のモンスター映画に特有の宇宙人(のスーツ)のビニール感がたまらん。それに容赦なく寄っていくサディスティックなカメラワークも笑。宇宙船が開くギミックもアナログ感満載で作り込みの精巧さを感じられる。

何より宇宙人の飛来した目的が人間の愚かさに歯止めをかけるためで、物語の展開にも人間の醜さが全開(好き)。冷戦真っ只中の50年代に作られたからこそ、原子力の是非をこれほど差し迫ったテーマとして描けた本作、私的にはこれまで見てきたSF映画の中でトップクラスに真実味があると思える、大好きな作品です。

——好きな台詞
「誠実さではなく、好奇心が科学を作る」
明石です

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