Kumonohate

無法松の一生のKumonohateのレビュー・感想・評価

無法松の一生(1965年製作の映画)
4.1
そもそもこのオハナシは大好きなのだ。阪東妻三郎版も、稲垣浩監督によるそのセルフリメイクの三船敏郎版も、ひさうちみちお版も大好きである(三國連太郎版は見てない)。

身分違いの家族に対して分(ぶん)を守りながら親交し、身分違いで筋も通らないと自らの恋心を押し殺し、自分の利益を顧みずその家族の役に立とうとする。全く封建的と言わざるを得ないし、現代の自己解放の潮流とは真逆なのだが、好きなものはしょうがない。義理を重んじ人情に厚く自分を抑えて耐え忍ぶ。そんな日本男児の侠気に打たれてしまう。

そして、本作も、脚本が阪妻版や稲垣版と同じ伊丹万作ということもあり、当然のことながら面白かった。また、主役の魅力という点では、運動会の駆けっこのシーンと祇󠄀園太鼓のシーンが、まさに勝新ならではの迫真で良かった。ただ、勝新が余りに凄いためか、恥ずかしさやうざったさから松と心の距離をとりたがるボンのくだりが、他の2作と比べて弱い気がした。だが、一方で、松が死んで行李の中をあらためるシーンでは、滂沱の涙。ここは本作が1番。これも勝新の魅力が成せる技かもしれない。
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