Sari

過去のない男のSariのネタバレレビュー・内容・結末

過去のない男(2002年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

同年カンヌ国際映画祭でグランプリ受賞作。カティ・オウティネンが女優賞受賞。
記憶を失った男性の運命を描くアキ・カウリスマキ監督による“フィンランド三部作”(敗者三部作)第2作。

列車で夜のヘルシンキにたどり着いた男性は暴漢に襲われ、身ぐるみ剥がされた上に意識不明の重体に陥る。
病院に担ぎ込まれた彼はいったん死亡宣告を受けるが、その後奇跡的に息を吹き返して病院から脱走。
港湾地区で行き倒れとなっているところを、コンテナの住人ニーミネン一家に救われる。過去の記憶をすっかり失ってしまった男性は、一家や救世軍で働く親切な女性イルマの世話を受けながら、新たな生活を送り始めるのだが……。

マルック・ペルトラ演じる主人公の男が、家庭菜園と呼べるものではない庭先でじゃがいもを植えたり、コンテナのキッチンでステーキを焼きオウティネンに振る舞う場面などのささやかな幸せが良い。
ボロいコンテナの家賃を催促するケチな警察官の愛犬の名はハンニバルだが、全く噛まない…。
愛し合うふたりだが、男の身元と既婚者であることが判明。しかし帰宅すると妻と不和にあり、彼の知らぬ間に離婚が成立しており妻には既に新しい恋人が居るというのがカウリスマキらしいユーモア。列車で流れる日本のクレイジーケンバンド「ハワイの夜」をバックに、寿司と日本酒を嗜む、シュールというかカウリスマキ独特の哀愁が良い。

カフェの壁に亡きマッティ・ペロンパーのモノクロ写真が何気なく貼ってあるのに、思わずグッときてしまう。
マルック・ペルトラは、映画『かもめ食堂』で、コピ・ルアックと言って小林聡美にコーヒーのおまじないを教えるのを思い出した。

2022/06/07 WOWOWプラス(録画)
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