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ブリキの太鼓のparaのレビュー・感想・評価

ブリキの太鼓(1979年製作の映画)
3.9
むかしテレビで確か深夜に放送されたのを親に隠れてこっそり観て以来。
あまりにも強烈な場面がトラウマとして記憶に残り、いつかまた観たい作品の一つだったこともあり、今回「領土と戦争」特集で解説付きというので鑑賞。

猥雑な感じと母親が海岸でうなぎを生で食べて気が触れる(←現在に至るまでの“鰻は生で決して食べてはいけない“トラウマ事案。実際には鰻は調理されており、食べていたのは生の魚だった…)、大人になることを拒んでいたオスカルの最後の決意のダイブ、以外は何一つ覚えておらず、記憶から想像した以上に領土と戦争をテーマとするにふさわしく、
加えて言えばもっと暗く陰鬱な映画だと記憶していたが、戦時中とは思えない軽妙洒脱な作品であった。
これは恐らく汚い大人になることを拒んだオスカルが、善悪ではなく好きか嫌いかでしか世界を見ないからなのだろう。

自分も大人になって少しは知識も得て、世界大戦における欧州の勢力図をなんとなくわかった上で観ると、戦争によって翻弄された領土とそこに住む異なる民族の軋轢を自然に描いていることがわかる。

解説によれば、ディレクターズカット版ではしっかりユダヤ人についても描かれているとのことのため、これまたいつかの宿題とし、その時にレビューし直します。(その描かれ方が他の作品とは異なる視点とのこと)

映画は現在のポーランドである当時は自由都市ダンツィヒと呼ばれた都市が舞台。
カシュバイ人でありポーランド人でもドイツ人でもない祖母。(オスカルの母も同じ)
本当の父親はポーランド人かドイツ人かは明らかにされていないが、戸籍上はドイツ人の父。従兄弟であり愛人のポーランド人が実父のような。。
表向きドイツ人の血が混ざるオスカルは、ドイツ敗戦後はポーランドを後にするしかなかったということと、1979年のドイツ映画であること、ナチスのポーランド侵攻にソビエトによる支配という史実に則った流れであるという解説は有益でした。(ヒトラーの演説肉声を使用した等)

歴史的背景をもっと深く知れば、もっと理解度が増す映画ですが(原作はノーベル賞作家でもあり、ナチス武装親衛隊所属でもあったギュンター・グラス)
児童ポルノ論争も起きたそうなので、好き嫌いは分かれると思う。
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