T太郎

海を飛ぶ夢のT太郎のレビュー・感想・評価

海を飛ぶ夢(2004年製作の映画)
3.7
768
最近、シリーズ物のレビューが続いていたので、渋めにスペイン映画を観てみた。

先日、観賞した「ブラックバード」と同じテーマの作品だった。
つまり、人の尊厳ある生、安楽死についてだ。

非常に難しい問題である。

この物語の主人公は、人の助けがなければ何もできない。
頭部以外はすべて麻痺しているのだ。
ただ、彼はユーモアがあり、とても魅力的な人物だ。
女性にもすこぶる人気がある。
家族にも恵まれている。

そんな彼だが、切実に死を望んでいるのだ。
無理もない。
28年もの年月をただベッドの上で過ごしてきたのだ。

彼は想像の中では自由に動く事ができる。
空さえ飛べる。
山野を超えて海まで行けるのだ。
それだけを慰めにただ呼吸をしている。
そんな状態なのだ。

しかし、人々は彼に生きて欲しいと言い、人によっては生きろと言う。

生きる事は権利であり、義務ではない!
彼はあくまで死を望んでいるのだ。

死後の世界に夢を抱いているワケではない。
「死んだ後は無があるだけだ」とも言う。
そんな彼が死を切望しているのだ。
誰が彼の選択や願いを否定できるだろう。

うろ覚えだが、“尊厳死“とは医療行為を伴うものだと聞いた事がある。
患者の希望により積極的な延命処置を取り止めたり・・・そんなイメージがある。

だから、「ブラックバード」のレビューでは“尊厳死“という言葉はあえて使わなかった。

しかし、こういう物語と“尊厳“という言葉には、切っても切れない関連性がある。
人は“尊厳ある生““尊厳ある死“を求める生き物なのだ。

主人公の立場にある時、それを“尊厳ある生“と言い切る自信は、私にはない。
もちろん、同じ立場で自信を持って生きている人もたくさんおられるだろう。
何が“尊厳“なのかは人によるのだ。

などと柄にもなく考えた次第である。
まあ、難しい問題だ。
私の脳ミソは沸点に達している。
蒸発する前に冷やしてあげなければならない。
脳ミソは大事だ。
T太郎

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