千年女優

海を飛ぶ夢の千年女優のレビュー・感想・評価

海を飛ぶ夢(2004年製作の映画)
4.0
かつては商船で働く海の男ながら海中に飛び込んだ際に事故で半身不随の寝たきり状態となったラモン・サンペドロ。以来28年に渡って兄夫婦の介護下で生きる彼が、依存せずには生きられない生活に絶望して安楽死を望み、難病CADASILを患う女性弁護士で死ぬ権利を尊重するフリアやラジオDJのロサらと計画を練る様を描く伝記ドラマです。

自殺を良しとしないカトリックが国教のスペインにおいて安楽死を求める活動を行ったア・コルーニャ出身の実在の人物を、ゴヤ賞常連のアレハンドロ・アメナーバルの監督で映画化したスペイン映画で、後にアカデミー賞を獲得する主演ハビエル・バルデムの演技が人々の心を打ち、2021年に安楽死と自殺幇助が合法化される礎になりました。

三十年近くも人知れない苦しみに苛まれた実在の人物に敬意を示すように、決してドラマティックな脚色をすることなく真摯にじっくりと決断に至るまでの軌跡を綴ります。あからさまな演出を挟まずとも切実なる想いが伝わり、「そんな状況でも頑張っている人が…」という安易な一般論では決して図れない、各々の現実に向き合う一作です。
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