何度も映画化ドラマ化された松本清張原作の最初の映画化だが、前々から思うのは主人公の桐子を悪女と決めつける事は些か違う気がする。
弁護士に恨みを持つしっかりとした理由が存在し、それを終盤に彼女は自らの唯一の武器、女性の肉体を駆使して弁護士に復讐を遂げるのだ。悪女ではなくアンチヒロイン像と呼ぶのが相応しいと思う。
松本清張はフランスのサスペンス映画の傑作【眼には眼を】をヒントにしたと云う。なるほど、あれも究極とも呼べる復讐劇だった。
橋本忍のその正攻法の脚本をなんとあの山田洋次が監督、一切の妥協を許さない硬質なドラマ展開が秀逸。
無実の罪で獄中死する主人公の兄の役は露口茂(!)。最初は気づかなかった…。