北アイルランド紛争における地域感情、宗教関係の根深さと、それによって引き裂かれた男女のラブストーリーを主軸にしつつ、あるボクサーの決意に満ちた姿を力強く描く。
人々がほんとに求めているものってなんなんかなぁって思ってしまう。和平なのか、誇りなのか。長い間続いてきた対立の歴史は本質や解決とは程遠い因習も生む。争いの対価を正当化することって、ほんとにこじれるし難しい。
外から眺めているだけじゃピンとこない張りつめた世界を、この映画からはびりびりと感じてしまう。
そんな政治的にも、人間的な意味でもねじれている途方もない構造に、暴力ではなくあくまでスポーツとして拳をもって立ち向かっていくダニーの寡黙な姿が、切なくも激しく感情に訴えかけてくる。
男たちの物語、女たちの物語。そのスタンスの違いも、紛争の側面を知るうえでとても重要だったし、繊細かつ誠実でとてもよく出来てる。
ふと気がつくと、これインアメリカの監督さんだった。細かいところの気の配りかたっていうか、この人の人物描写好きだなぁ。
