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インドシナのtakのレビュー・感想・評価

インドシナ(1992年製作の映画)
3.7
 映画を見始める前に強い先入観を持つのはよくない。予備知識や多少の情報は必要だけど、偏った視点になりがちな先入観は映画を観る上での妨げになりがちだ。オスカー外国語映画賞まで受賞したフランス映画大作「インドシナ」。仏領インドシナに広大なゴム園を所有する主人公は、ベトナム王家の血筋をひく娘を養女として暮らしている。・・・その設定を聞くだけで、なんか帝国主義的なお話に思えて仕方ない。そう思いながらこの映画を観ると、カトリーヌ・ドヌーブ扮する主人公が、やたらと威張ってる映画のようにとれるかもしれない。しかし、この映画が描きたかったのは、独立の機運が次第に高まる時代に翻弄される人間の運命のドラマだ。決しておフランス万歳な映画にはなっていない。一人のフランス人軍人を母も娘も愛してしまう三角関係。旅に出た娘が目にする植民地としての厳しい現実。そして軍人と娘の逃避行・・・長尺だが展開が実にドラマティックで飽きさせることはない。

 この映画は女性ファンに特に好評だったと聞く。カトリーヌ・ドヌーブがとにかくかっこいいもんね!。男性の僕らからみるとすごくクールな印象でちょっとご勘弁願いたい(笑)。誰に縛られることもなく、恋多き女性で、母としての視点もしっかりあって、女性として自分を曲げずに生きている。また娘カミーユも、ベトナムにとっては支配者層であるフランス人母から離れて自分の生き方をつかんでいく。二人が愛した軍人ジャン・バティストをめぐる激しい恋も描かれ、世界遺産となったハロン湾の美しい風景、ドヌーブのファッション・・・。映画「インドシナ」は、ドロドロと現実離れした昼ドラを毎日結末を気にして悶々としながら見続けるより、女性にとっては浮き世を忘れるのに即効性がある映画なのかも。僕はハロン湾の美しい映像を繰り返し観たい・・・という気持ちになった。映画は時に2時間の現実逃避だったりする。それは新たな元気をくれるものだ。

 それにひきかえ・・・ジャン・バティスト君を筆頭にこの映画の男性はどうも頼りない人物が多い。なんか確たる意思が見えない。ドヌーブに言い寄る警察署長氏はどこか頼りないし、農園に愛着を示す父親にしてもどれくらい土地への愛着があるのかどうも読みにくい。ジャン・バティストだってどちらを愛していたのか?と尋ねられれば最後までよくわからない印象が残るのだが(でもあの状況なら仕方ない・・・かも?)。

 娘がベトナム解放のシンボルとして登場するラスト。母親で支配側だったフランス人母と、その保護下で育って自分の道を見いだしたベトナム娘。国の状況と二人の状況が重なって、何ともいえない切ない余韻を残してくれる。インドシナ生まれのフランス人主人公がアジアから旅立つ。カミーユとバティストの間に生まれた少年の「私にとって母親はあなたです。」という言葉は、主人公にとっての誇りだろうし、インドシナに生きた証となるのだろう。
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