螢

シルビアのいる街での螢のレビュー・感想・評価

シルビアのいる街で(2007年製作の映画)
3.0
美しい街の風情と、音と光と風、そしてアンニュイな空気を織り交ぜて撮りあげた、雰囲気イケメンならぬ雰囲気映画。

もっとありていにいうと、ようこんなもん撮ったな!?というのが(かなりの)本音の、スペイン・フランス合作のストーカー映画。

夏のフランスのストラスブールを舞台に、かつて恋した女「シルビア」の面影を宿した美女を、男がつけまわす。
それだけのお話。

でも、追いかける男とつけられる女それぞれのアンニュイで思いつめた感じの表情、それなのに何一つ明かされない故にかえって鑑賞者の想像力を掻き立て続ける「平坦な」物語展開、音楽セレクトの妙、ストラスブールの美しい街並みや生活音、光や風といった自然物を捉えた映像美などが、細かな演出の積み重ねとして効いていて、不思議な余韻を残します。

ここまで緻密に組み立てられて目の前に示されると、ストーカー男の病んだやばい空気感さえも物語に彩りを添えるスパイスとさえ思えてくるから、なんとも不思議。

まあ、美男美女だから「観られる」ものになっている点は否めない気はしますが…。

想像力を掻き立てる芸術映画ととらえれば、とても意欲的でよくできた作品だと思います。

消えない不可思議さと余韻に、この監督の別の作品を手に取ろうと気には確実になりました。
螢