アキラナウェイ

侍のアキラナウェイのレビュー・感想・評価

(1965年製作の映画)
4.4
監督、岡本喜八。
脚本、橋本忍。
主演、三船敏郎。

もう、この時点で
名作の香りが漂うのは何故?

古き良き面白き邦画の脚本はいつだって橋本忍氏だ。脚本家デビューが黒澤明の「羅生門」だもの。以後、黒澤組のシナリオ集団の一人として、小国英雄とともに「生きる」「七人の侍」等の脚本を共同で執筆。

他の代表作としては、「切腹」「白い巨塔」「日本のいちばん長い日」「砂の器」「八つ墓村」等…。

本作もやっぱり面白いったらない。

安政7年2月。大老井伊直弼の暗殺を画策する水戸浪士らは、連日桜田門の前で登城する井伊を待ち受け、決行の機会を伺っていた—— 。

所謂、"桜田門外ノ変"である。

水戸浪士らの中に紛れた素性の知れない、尾州浪人と名乗る新納鶴千代(三船敏郎)。自分の父親が誰かも知らず、只ひたすら大老井伊直弼の首を獲り、名を上げたいと願う鶴千代。

そんな鶴千代に、井伊直弼側のスパイではないかとの嫌疑がかかり…。

古き日本語、侍言葉の響きの美しき哉。

序盤、終盤以外はチャンバラ劇がないのに、脚本が良いので中弛みせず、全く飽きない。

三船敏郎の斬撃が速過ぎて、三度巻き戻した。

刀が折れて壁に刺さる瞬間や、
血が噴き出る瞬間。

現代の演出と遜色ない程に、動きのある映像が素晴らしい。

桜田門を睨む者、刀に手を掛ける者、
笠の紐を締める者、短いショットを繋げる編集が実に見事。

地面擦れ擦れから見上げる様なカメラアングルもあり、映像として感嘆の声が漏れる。

侍になる事を夢見、
その首を掲げたその時。
哀しき運命の決別。
嗚呼、哀れ也。

ぬーーーん。
面白い。