ten

僕の大事なコレクションのtenのレビュー・感想・評価

僕の大事なコレクション(2005年製作の映画)
4.0
家族や思い出にまつわる品々を集める(ばあちゃんの入れ歯まで!)ヘンテココレクターのユダヤ系主人公。全部ジップロックに入れてるけど入らない物は収集しないの?
主人公の収集欲すごく理解できるので、改めてコレクターってセンチなのかもなって思うよ。特に思い出の品々の収集ってまんまセンチメンタルでしょう。今ここにある物を自分の手元で永遠に結晶化させようとする行為もしくは忘れまいとする行為。

故祖父の青年時代の写真をきっかけに、写真の祖父の隣に立つ命の恩人らしい女性を探しにジョナサンはウクライナへ行く。旅先案内人を副業?にするウクライナ人の家族(英語喋れないじいちゃんと今どきの若者風の孫とあと犬)と共に目的の女性を探す道中、歴史が土地や人に残した痕跡というのが少しずつ立ち現れてくる。家族の記憶を探しに行く旅でありながら、戦争の記憶とも絡められた二重の旅でもあったわけですね。ウクライナ爺さんや恩人の女性といった当事者たちそして土地の過去によって戦争の記憶が開かれていく。その中で爺さん含め戦時中は反ユダヤだったウクライナを国籍にする孫と、殺戮される立場であったユダヤ人の孫が時を経てただの若者同士(かつ継承者)として交流すること含め、この旅はジョナサン個人のものではなく暗闇に沈殿しつつある記憶を照らす点灯の旅なのだと。そしてここで気がつく原題は「Everything is illuminated」

主人公や旅先で出会う女性はジップロックなり箱なりに沢山の物を収集しているわけですが、物を残すということはなんなのか、思い出すということはなんなのか、個々人の間にも歴史にも普遍的な意味がある行為だよね。

祖父が亡くなった次の日に救いを求めて。

「過去は常に我々と共にいて内側から外を照らしときには裏を表にしてしまう」
ten

ten