一

東京画の一のネタバレレビュー・内容・結末

東京画(1985年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

子供のころよく無を想像してみた
無を考えるのは怖かった
無は存在しないと自分に言いきかせた

目の前にあるものだけが存在する
現実だけが…
映画の文脈の中で 無ほど無意味な概念もない
人はだれでも
現実を自分なりに知覚する
それぞれが現実を自分の目で見る
他者を 愛する人々を見る
身の回りの事物を
街や風景をそこに生きる人々を
他人の死を見る
死すべき人間
いつか壊れる物
見て 生きる
愛 孤独 幸福 悲しみ
恐れを生きる
人生を見る
見るのは自分だけだ

なのに 自分の経験と
映画で見る映像とが
こっけいなまでにずれることを
だれでも知っている
このずれに慣れきって
映画と人生が違うので
もう当たり前なので
突然 スクリーンにー
何か本当のものー
何か現実のものを見ると
息をのみ
身震いしてしまう
画面の隅にいる子供の
何気ないしぐさ
画面を横切って
飛ぶ1羽の鳥
一瞬 影を落とす雲…
今の映画では
そんな真実の一瞬ー
人と物がそのままの姿で現れるー
そんな瞬間は
ごくまれにしか訪れない

それがあるのが小津の特に晩年の作品のすごさだ
真実の一瞬の映画ー
いや 一瞬だけではない
最初から最後まで真実が途切れず
人生そのものについて語り続ける映画
そこでは人 物 街 風景が
そのままの姿で自らを啓示する
今 映画はこのように
現実を表すすべを
もう持たない
すべては昔のこと
無 空虚が現代を支配する


ヴィムヴェンダースの映画の捉え方がキリスト教へのまなざしと近い
映像の中に真実が少なくなったとは思う


原田氏の撮影風景見れるの最高
カメラのセッティングが儀式で祈り
機材も自作するのが真のカメラマン
ござ
映画は山

!!

画狂小津
一