佐藤でした

ゼア・ウィル・ビー・ブラッドの佐藤でしたのレビュー・感想・評価

3.3
20世紀初頭、石油採掘でアメリカンドリームを叶えた男ダニエル・プレインヴューの栄光から破滅までを描いた今作。宗教批判や資本主義をテーマにした、PTA作品の中でもわりと社会派な一本。

石油が血で、ダニエルはドラキュラというメタファーなのですね。「生きていくには仕方がない」と、他人を犠牲にして自らを生かす。

ドラキュラにとっての生き血は、他に代用品がない、常に必要なものだが、「富」には上限がある。ある一定量、有り余る分量が集まった瞬間に、札束は紙くずに変わる。
その時に手元に残るのが「虚無」だけだとしたら。何世紀にも渡って生き続ける不死のドラキュラよりも、“金しかない”この男の心中は悲惨なものがあるだろう。

ドラキュラや吸血鬼の映画が不得意の私は、ストーリーはあまりピンと来なかったのですが、今作は“ビンタ”が印象に残った。
油田を独り占めしたいダニエルと、地元のカリスマ牧師イーライが何度も対立する。その時の「暴力」がすごく順当なものに見えるのだ。お互い対等な立場で“今ムカついたから叩いている”。そんな感情に任せただけの単純な暴力。

よく映画で描かれる暴力は、力の強い者が弱い者に‥権力を持つ者が下階級に‥悪人が善人に‥という理不尽なものが多いからか、新鮮な気がした。そしてそこに“矛盾たっぷりでキレまくる人”を描かせたらピカイチのPTA監督がいた。
佐藤でした

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