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サムライの1000のレビュー・感想・評価

サムライ(1967年製作の映画)
4.2
寒色で統一された色味がだいぶ好みだった。SF映画かと思わせるほど無機質で生活感のない空間ばかり。フランスのノワールはじめて見たけど、思ってたよりいいすね。

ポーカーフェイスのアラン・ドロンは優秀な仕事人風だが、風というだけで、どちらかと言うと神経質なだけの若者だ(30歳という設定らしいが、もっと若く見える)。車上荒らしに使うピッキング用の鍵を、一個一個律儀に並べていくなんて相当アホらしい。それじゃとっさに逃げるときに困るだろう。おまけに飼ってる🦜ちゃんも神経質だ(だが、有能である)。
仕事ならやるし、やられたらやり返す、負傷したら手当するし、ガンダで飛び出し下車もする。しかし、その過程で行為を動機づけるはずの感情が見えない。「自分、不器用ですから……」と言わんばかりに、勝手に生きて勝手に死ぬ。最後の弾込めないあれもなんのカッコつけだったのか謎だ。この味わいこそがノワールということなのだろう。
忠義みたいな精神性とかはなんもなしに、孤高さだけを取り出して『サムライ』ってタイトルにしたの、だいぶいい加減で一周回って好感すら抱く。

面通しで、右にパンしながら一人ずつ首を振るカットがよい。ラストで手袋付けだしたときのザワザワ感もコミカルでよかった。
都合のいい恋人やラウンジの受付嬢がやたら美人だが、彼女らを差し置いてファム・ファタールの座に座るピアニストも、いまいち立場や目的が明らかにならないまま幕切れる。こちらとしても、不必要に感傷的にならずに済むわけだ。
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