櫻イミト

真昼の決闘の櫻イミトのレビュー・感想・評価

真昼の決闘(1952年製作の映画)
4.0
「地上より永遠に」(1953)のフレッド・ジンネマン監督による社会派西部劇。劇中内における時間経過と上映時間の経過がほぼ同じの「リアルタイム劇」。西部劇の主人公(保安官)の描き方を変えた革新作。ゲイリー・クーパーがアカデミー賞主演男優賞を受賞。共演はグレース・ケリー。

1870年、西部の小さな町。この日、保安官ウィルは結婚を機会に仕事をやめ他の町へ向かうことになっていた。しかし突然電報が入る。かつて逮捕した無法者ミラーが保釈されて正午到着の汽車でこの町に着くという知らせだった。ウィルは正義感から奴らを迎え撃とうとするが妻も街の者たちも反対する。。。

午前10時35分から正午過ぎまでの90分ほどの出来事を85分で描いているる。構成も人間ドラマも隙がなく面白かった。映像では後半、保安官1Sからズームアウトしてガランとした街を歩いていくショットが秀逸で、孤独をワンカットで見事に表していた。

※本作はこの年のアカデミー賞で作品賞の最有力候補と言われながら「地上最大のショウ」に敗退。当時は“赤狩り”の時代で、リベラル派として有名だったジンネマン監督とカール・フォアマン脚本の作品に票を投じるのをアカデミー会員がためらい、赤狩りの急先鋒だったデミル監督作品に投じたためとされる。まさしく本作の内容と同じ現実が示された。

※ジョン・ウエインは本作で保安官がバッチを捨てるシーンを「許せない」と語り、ハワード・ホークス監督はプロなのに一般市民に助けを求める保安官の姿が気に入らず、両者で「リオ・ブラボー」(1959)を制作した。

※ドン・シーゲル監督は本作へのオマージュを込め「ダーティー・ハリー」(1971)でクリント・イーストウッド演ずる刑事にバッジを投げ捨てさせた。イーストウッドも本作からヒントを得て「荒野のストレンジャー」(1973) を監督・主演した。
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