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ベルリン・天使の詩のmanamiのレビュー・感想・評価

ベルリン・天使の詩(1987年製作の映画)
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ヴィムヴェンダース作品鑑賞12作目。
たとえばロンドンとかパリとか、そういう有名都市は街並みが映し出されるだけで、そこがどこなのかが分かる。でもベルリンは正直、どんな街なのか何があるのかという印象がないな。と、冒頭、天使目線でベルリンの街を見せる映像で気がつく。
ついでに、そんな有名都市と東京、京都が同列に語られるの嬉しいな。しかも順序としては東京、京都の方が先だし。さすがヴィムヴェンダース監督。
まあそれはさておき、前半はベルリンの街なかを天使達がウロウロする、つまりブラ天使。おすすめされた通り、手を擦り合わせるの可愛い。
で、街の人々の心の声を聞いちゃう、いわばサトリの天使。ライブハウスのシーンでは日本語も聞こえてきてたね。特に訳もついてなかったけど、ドイツにいる天使はドイツ語しか分からないってことなのか?
そしてたびたび挟み込まれる、詩のような哲学のような言葉たち。「子供が子供だった頃」で始まり、いくつもの場面で繰り返される疑問には「なぜ私は私であなたではない?」「悪があるって本当?」など印象に残るものが多い。「寂しさって自分を丸ごと感じること」なども、今作後にノーベル文学賞も受賞するペーターハントケの筆致なのだろうか。
「ドイツ民族はひとりひとりミニ国家を構えてる」と評したり、ユダヤ人を蔑む声や終戦直後の映像なども盛り込んだりしているのは、監督からドイツへの視線なのだろうかというのも気になるところ。
そんなこんなでメインとなる二人の天使と一人の女性以外にも、とんでもない数の人物が現れる。刑事コロンボのピーターフォークが本人役で出演したりもしちゃう。
それらはまるで緻密な点描のよう。ひとつひとつは独立していて、近くで見るとただの点の集まりにしか過ぎないのに、離れるにつれある形象がくっきりと浮かび上がってくる。
カラーとモノクロの使い分けも、それをいっそう際立たせる。ついに出会った二人の、キス我慢選手権みたいなシーンは、ラブシーンなのに迫力満点ね。彼女がつけてるイヤリングが天使の羽みたいな形なのも素敵。

すべてのかつての天使 とくに 安二郎 フランソワ アンドレイにささぐ

9(1719)
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