HAYATO

ベルリン・天使の詩のHAYATOのレビュー・感想・評価

ベルリン・天使の詩(1987年製作の映画)
3.6
2024年130本目
人間に恋した天使の運命
『PERFECT DAYS』の巨匠・ヴィム・ヴェンダースが、祖国・ドイツで10年ぶりにメガホンを取り、第40回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞したファンタジー
人間の心の声を聞くことができる天使・ダミエル。地上に降りて人間たちの苦悩に寄り添っているうち、孤独を抱えたサーカスのブランコ乗りの女性・マリオンに恋をする。ダミエルは人間になって彼女を抱きしめたいと願うが、それは天使の“死”を意味していた…。
脚本に、後にノーベル文学賞を受賞する作家・ペーター・ハントケが参加。
『手紙は憶えている』のブルーノ・ガンツが主演を務め、『刑事コロンボ』のピーター・フォーク、シンガーソングライターのニック・ケイヴが本人役で出演。
『ローマの休日』などで知られる撮影監督・アンリ・アルカンは、当時既に引退状態であったが、ヴェンダース監督の要請で復帰し、第23回全米映画批評家協会賞、第54回ニューヨーク映画批評家協会賞、第14回ロサンゼルス映画批評家協会賞の各撮影賞を受賞した。
『コンスタンティン』や『天使のくれた時間』、『素晴らしき哉、人生!』など天使が出てくる作品は古くからたくさんある。ヴェンダース監督によると、本作のアイデアの源は、ベルリンの街のあちこちに存在する天使の意匠にあるそう。
廃墟から街を見下ろす天使。モノクロで描かれる天使の視界は、人間界を俯瞰していて、市井の人々が抱える様々な葛藤や苦悩、不満、後悔といった要素が客観的に表現されていた。
大勢の天使が居場所にしている図書館のシーンは、神秘的で美しく、有名な場面だけども、最初は撮影許可が降りず、市長の口添えによって撮影できるようになったらしいのでその市長の功績はとんでもないと思う。
モノクロとカラーの鮮やかな対比、独特な音楽、哲学的かつ詩的なセリフが印象に残り、難解だけど、生きる喜びや人生の素晴らしさが感じられた。
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