とと

ベルリン・天使の詩のととのレビュー・感想・評価

ベルリン・天使の詩(1987年製作の映画)
4.0
感じる系映画。
映画は基本受動的で娯楽作品が数多くあるが、中には本作のような能動的に感覚を研ぎ澄ましてみる作品もある。
それもまた映画の魅力である。

色彩や感触などを持たない天使が、興味深く人間を観察し見守り続ける。
生への憧れ、1人の女性への恋から、人間として生きる道を選択する。

天使というモチーフは、イギリスのロックバンド《ザ・キュアー》の「天使の囁き」から着想を得たものらしい。

断片的な人間の言葉が心地良い散文詩のリズムとなって、眠りを誘う。。

この作品はヴェンダース監督が影響を受けた小津安二郎、フランソワ・トリュフォー、アンドレイ・タルコフスキーの3人の作品へのオマージュであり、彼らに捧げられた作品である。
タルコフスキー監督作品は寝落ちしてしまう節があるので納得。

ベルリンの壁崩壊前の貴重な映像と共に、世界観が詩的に美しく描かれているのが特徴的な作品。

本作の、
「傍観者で無機質な世界から、苦痛や悲しみさえも生きる喜びで鮮やかな世界へ降り立つ」天使と、
現在の、
「利便性が高く気薄な人間関係を築く都会から、開放的で閉鎖的な村社会の田舎へ引っ越す」自分自身に、
重なってみえてポジティブ思考を与えてくれた作品になった。
とと

とと