暮色涼風

ベルリン・天使の詩の暮色涼風のレビュー・感想・評価

ベルリン・天使の詩(1987年製作の映画)
5.0
見た目は中年男、中身は天使。
人間の心の声を聞き、詩を詠い、彷徨っている。
そんな彼は、不老不死でいるよりも人間として生きることに憧れてしまう。

やがて人間になり、乞食からスタートした元天使は、悲しいこと、痛いということ、寒さを感じること、味を感じること、時を感じること、色を感じること、人にぶつかるということ、道を尋ねられるということなど、良いことも悪いことも何でもないようなことにも、子供のように興味を示し、無邪気に楽しんだ。
その姿を見て、谷川俊太郎の『生きる』という詩を思い出した。

"生きているということ
今生きているということ
それはミニスカート
それはプラネタリウム
それは…"

その詩を知った当時小学生の自分は、このミニスカートのあたりが特に理解できずにいたけど、この映画を観てようやく繋がった。

そして、忘れていた色んなことを思い出させてくれた。

"子供は子供だった頃"と中年天使は詠う。
"大人は子供だった頃"ではない。
子供は子供のうちに、子供だった頃の純粋無垢な気持ちやものの見方を忘れてしまうのだと気付いた。

この作品は、とてもとても素敵な人間賛歌映画である。
暮色涼風

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