深獣九

死霊のはらわたの深獣九のレビュー・感想・評価

死霊のはらわた(1981年製作の映画)
4.0
驚いた。あんまり怖くない笑。
だが、素晴らしい作品であることは変わりない。。

なぜなら『死霊のはらわた』は低予算映画のバイブルだから。
脚本や芝居、カメラワークなど数々のアイデアでこれほどすごいものができるんだ、観客を怖がらせることができるんだ、ということを知らしめた傑作なのだ。

もう語り尽くされているが、あえてこの映画の好きなところを挙げてみる。公開から30年以上経っている超有名作なので、ネタバレはご容赦。

◯死霊がいないのに“いる”
車の後ろをずっとついてくる、掛け時計の振り子の裏から見ている、枯れ草の上を這ってくるなど。まるでそこに何かがいるように見える。何も映ってないのに何かがいるような映像は、当時はとても斬新だったのではないか。アイデアとカメラワークの勝利。

◯特殊メイクとスプラッター
とにかく死靈が気持ち悪いし汚い笑。ぐじゃぐじゃだしびしゃびしゃだ。白濁した瞳や体液は吐き気をもよおす。切り刻まれた死霊がピクピク動いたり、腹から腕が飛び出たり、虫がわいたり。なにより特殊メイクが気持ち悪かった。カビの生えたボロボロの枯れ木のような肌には、別の理由で恐怖を感じた。本当に低予算なのか? 職人技。


そしてもうひとつ、気に入ってる理由を語りたい。思い出話を少々。スルー推奨。

高校時代、友人と連れ立って観に行った。立川の映画館だったと思う。当時は血まみれのスクリーンに震え上がったのを覚えている。人はびっくりすると本当に空中に飛び上がると知ったのもこの時だ。

そしてなにより、ホラーやスプラッターへの扉を開いてくれた作品がこの『死霊のはらわた』なのだ。
大人になって“はらわた”までホラーにどっぷりと浸かった私は、あの頃の新鮮な気持ちには戻れない。魂は血とヘドで汚れちまった。

だけどこの作品は私にとってもバイブルだし、なんならこの世界に引きずり込んでくれた「死の書」なのだ。この恩は一生忘れないだろう。
深獣九

深獣九