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ジプシー・キャラバンのmimocyanのレビュー・感想・評価

ジプシー・キャラバン(2006年製作の映画)
3.5
5つのバンド、4つの国籍、9つの言語。ジプシー音楽をルーツに持つ総勢35名によるジプシーキャラバンの北米ツアードキュメンタリー。

ジプシーってよくわからない存在でした。ざっくばらんなイメージでは、流浪の民とか、何故だかあちこちで嫌われてるとか…実際のとこどういう人たちなのかほんとのところを知らなくて。
これを見なかったら、多分そのイメージをずっと持ったままだったかもしれない。

一番驚いたのはロマと呼ばれる人たちが、こんなに世界各地に散らばってること。ルーマニア、スペイン、マケドニア、インド…そして、アメリカ。バラバラな地域で生活してきた人々が、ロマであるルーツを共有することで団結していくところに、更に驚いた。元は同じでも、ケンカばっかりするじゃない、人って、歴史って。
そのルーツを束ねるのに、大きな役割を担っているのが彼らの音楽。
ナチの時代、ユダヤ人の虐殺は語られても、ロマの虐殺は語られない。迫害を受けながら、世界に無視されてきた彼らの音楽は独特で、スケールが大きい。彼らのことわざ「曲がりくねった道は真っ直ぐには歩けない」の言葉通り、長い時の中を必死に生きてきた歩みが凝縮されてる。
音楽に国境はないなんていうけれど、彼らはほんとにそれをやっちゃってる。それも文化的、社会的な背景を踏まえた上で。
それはきっとジプシーと呼ばれる人々が見つけたひとつの答えなんだろうね。この人たちから学べることって、いっぱいあるとおもう。

「オーケストラ!」でコンマスをしてた超絶技巧のバイオリン弾きのおっちゃんが本人として出てきたり「アンダーグラウンド」の喧しいあの曲がきけたりとちょっとしたお得感を感じる要素もちょびちょびあり。
長く壮絶な旅路の末に、世界中で底抜けに陽気で美しい音楽を奏でるロマに、そして数多のジプシーに幸あれ。
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