タマル

πのタマルのレビュー・感想・評価

π(1997年製作の映画)
4.0
いやよ!こんな頭の良い映画は嫌!! でもやっぱり好き。
とりあえず、お勉強して役に立ったとこまで載せときます。

何となくわかる! 「π」




ダーレン・アロノフスキー監督はユダヤ教徒の父の元でユダヤ人の文化に親しみ、超正統派ユダヤ教学校(イェシバー)に通う過程で「π」に通貫するカバラー的思想を育んだ。
イェシバーとはタルムードを学習する施設である。タルムードとはトーラー(神)を解釈するための注釈である。トーラー(神)を理解することは、すなわち世界の絶対法則(πの法則)を理解することに繋がってくるのだ。今作の主人公は「全てのことに法則がある」とし法則を解き明かそうとするが、これは「神名」を明らかにしようとするユダヤ教求道者の姿とも重ねることができる。

さて、ユダヤ教にもいろいろあるが、最終的には神と合一(帰る)することが目標という点で共通していると考えて良い。しかし、方法自体は派閥によって様々である。タルメードを学んだり、瞑想してみたり、トーラーを読んでみたり、「あわあわあわ」といってみたり。
多様な方法の中で、今回、映画の主人公がとった行動はミドラシュ(ユダヤ教神秘主義的解釈学)の「ゲマトリア」というテクニックである。

以下「ゲマトリア」について
旧約聖書は本である。しかし、本たらしめているのは人間の定めた一つの解釈に過ぎない。ベレシート(始めに神がいた)と定めた時点で、ベレシート以外の可能性が消えるのである。しかし、不分節の神へと上昇しようとするならば、言葉の意味を超えていかなければいけない。旧約聖書の意味を破壊し、創造し続けなければならないのである。
そういった思想の中で生まれたのが「ゲマトリア」である。
ゲマトリアは以下の手順を指す。

①文字の意味を消す。
②文字を数字に変換する。
③同一の数字をグループで分ける。
④法則によって導かれた数字を同一グループで延々と連想していく。
⑤新解釈にたどり着く。

映画内で父(3)+母(41)=子供(44)と言っていたのは、このテクニックを指す。

さて、映画の主人公が度々頭痛を起こしていたのを覚えているだろうか。目ざとい人ならば、その症状が映画の進行とともに悪化していったことに気がついたはずである。
何が起きていたのか。彼は「ゲマトリア」と幼児期の経験によって神への上昇を続けていた。それならば健康になりそうなものだが、そうはいかない。人は神に近づけば近づくほど、そのエネルギーを多く受け取らなければならなくなる。人とは神のエネルギーを受ける器であり、器には上限が存在するのだ。そして、汎神論的段階における器の破壊に象徴されるように、彼の頭(王冠・知恵・知性・慈悲)は砕け散ったのである。


以下、レビュー。

いやー、めんどくさかった。
でも頭のいい映画もたまにはいいもんだ。
シュピラーハケリームを起こさない程度に難しい映画も見ていきたいものですね。もう当分いいですけど。



あっ、面白いよ。面白い面白い。
オススメでーす。はい。
タマル

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