ちろる

都市とモードのビデオノートのちろるのレビュー・感想・評価

3.8
永遠のクラシックと、真新しさ、その二つ^を自由に操るデザイナーヨウジヤマモト。
一瞬一瞬で消費され続けるファッション哲学と、時代を超えていつまでも愛される事を目的とする映画哲学が何故か絡み合う。

彼は、消化され続けるファッション界に身を置きながら、はるか昔の人たちが生涯の服として着た皮膚の一部のような「消費しない」服に想いを馳せる。

映画とファッションという全く畑の違う2人が出会うことはこれを見れば必然だったのかもしれない。

東京好きのヴェンダーズのビデオノートに描かれるひと昔前の首都高速の景色は、今の私の知るそれとは全く違くて、「東京画」を観た時もそうだったけどとても詩的な東京の映像がそこにはあった。

そして、その映像にのせた山本耀司の世界、
沢山のデザイナードキュメンタリーが存在するけど、それらのどれとも違うファッションやデザイナーの裏側と素顔ような書き方ではなく、まるで日本から世界に羽ばたいた1人の男の哲学書のよう。
寡黙で、穏やかで、時に学者のような表情を見せながらお茶目な面を時折見せる山本耀司さんは本当に魅力的で、どことなく雰囲気がヴェンダーズにも似てなくも無い。
違う世界にいながら、彼が山本の作る服に惹かれたのは似たものを感じたとったからなのだろうか。

過去と未来の間に立ちながら人々の感動する服を作り続ける山本と、フィルムからデジタルへのジレンマを抱えながら作品を作り続けるヴェンダーズのふたりの想いが、いつのまにか重なり合う瞬間を切り取った粗い映像のビデオノートは、
彼らでしか作り出せなかった貴重な瞬間を堪能できる至福の81分間でした。
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