このレビューはネタバレを含みます
円に夢を見て、円を求めて生きる人たち。
岩井映像らしい妖しい描写。中国語と日本語が混じったような不思議な言葉。冒頭から世界観に引き込むには十分だった。
通りがかった車をパンクさせ、修理してさらにはガソリンを減らしておきガス欠になったらそれもまた売るというアコギな商売をするフェイホン。
福沢諭吉の言葉がファック・ザワにされてる。
マフィアの暗躍。グリコの兄リョウ・リャンキ。
「マイウェイ」のテープ。紙幣の偽造。
フェイホンの計らいでライブをすることになるグリコ。そしてレコード会社にスカウトされる。
「日本人にならない?その方が売れやすいんだよね」フェイホンは逮捕され、グリコはデビューへと羽ばたいていく。
トヨタ・ヤオハン。ヒタチ。グリコ。
日本のビジネスマンはグリコを食べて育つ。
「入れ墨は体に別な生き物を飼うようなもんだ。そいつが人格を変えてしまうこともある。そして運命さえも」
「蝶をつかまえたいの」
アゲハが入れ墨を彫ってもらうシーンは名シーンすぎるね。
ニセ札を作ってぜんぶを取り戻したいと言うアゲハ。
「グリコ、イモムシが蝶になったよ」
燃え上がる車に札束を投げ込む。蝶として羽ばたく。彼女の答え。
アメリカ2世で見た目もアメリカ人だけど生まれも育ちも日本で日本語ごりごりのやつがいたり、終始日本語、英語、中国語が入り混じり、退廃的な画も相まってアイデンティティの揺らぎや危うさ、人間の本性が浮き彫りになっていくし、お金というものがなくなったときに残る気概や誇りって何だろうというのを考えさせられる。