Eyesworth

スワロウテイルのEyesworthのレビュー・感想・評価

スワロウテイル(1996年製作の映画)
4.9
【不幸中の幸い】

岩井俊二監督の1996年の作品

〈あらすじ〉
円が最も強かった時代。胸に蝶のタトゥーをつけ美しい歌を歌う娼婦のグリコは、あるきっかけで偽造紙幣のデータを手に入れる。そして、中国系移民たちと共に偽札で儲けた彼女は、ライブハウスを買い取り、歌手として有名になっていく…。

〈所感〉
圧巻。大好き。でも、正直ちょっとよくわかんない。この現実にあったかもしれないIfのパズルの全てをわかりたい欲に駆られる程映画的な魅力に満ちている。日本語、中国語、英語が行き交う雑多な世界観で、あくまで架空の街のおよそ我々とは無関係な若者達の話なのになぜこんなにも懐かしくエモーショナルな気分にさせられるのだろうか。恐らく、経済といい価値観といい人情といいモラルといい既に失われた物で構成されているからだろう。今こんな作品を撮ったら四方八方から叩かれて上映にこぎつける等不可能だと思う。私が生まれる前の作品でこんな邦画が既に誕生していた事実が信じ難い。歌手のCharaが演じるグリコのデタラメな語感といい切迫感といい引き込まれる演技だった。江口洋介のアウトローな役柄もハマっていた。伊藤歩さん撮影当時15歳?でガッツリ胸を覗かせていたがあれは大丈夫なのか。毎日を生きるために必死な彼らからは現代の殆どの日本人にはない切実さが感じられる。とりわけ、親が亡くなり仲間に裏切られても、頭を使って懸命に地を這いつくばるイモムシのアゲハ。苦労を乗り越えて見目麗しいスワロウテイルに羽化した。YENTOWN『不幸中の幸い』イカシスギテル。
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