風ノ助

霧の中の風景の風ノ助のレビュー・感想・評価

霧の中の風景(1988年製作の映画)
5.0
顔も知らない父親がドイツにいると信じてアテネから旅する姉弟の話
序盤で父親は本当はドイツにいないとわかってしまう
どこへ向かえばいいのかわからないのに二人は旅を続ける
もう最初から希望を打ち砕かれる重苦しさ

イメージするギリシャと違って雪も降るし荒涼としててなんかロシアっぽいなと思った

死にかける馬を見て号泣する姉弟の後ろを結婚パーティーで浮かれた集団が踊り抜けるシュールな場面や時が止まったみたいに皆が動かずに雪を見上げている中をすり抜けて行くところなどちょっと不思議で幻想的なシーンが所々に挟み込まれる

お伽話のようでもあるけど現実的で残酷なエピソードもあり幼い二人にとって世界はとても厳しくかなり容赦ない話になっています

全体的にトーンは暗めだけれど全ての映像が静謐でとてつもなく美しいです
ワンカット長回しの中で静かに人が移動していき、例えば小さい弟が画面の奥にポツンと立っている奥行きのある可愛い構図が出来上がっていく過程を目の当たりにして震えました

目的のない旅は人生の様でもあり指針を見つけられず霧の中を彷徨う国家の様でもあります
姉弟が語る創世記が何を意味しているのかもわからなくて寓話として読み解くには難しく理解が及ばなかったけどありのままに観ても十分に心に響く作品でした
風ノ助

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